越中瀬戸焼とは|ジョブズが愛した立山の器と窯元・体験

越中瀬戸焼の茶碗を紹介しているアイキャッチ画像
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スティーブ・ジョブズが愛した日本の器があります。富山県立山町で430年続く「越中瀬戸焼(えっちゅうせとやき)」です。

ジョブズは京都で越中瀬戸焼の陶芸家・釋永由紀夫(しゃくなが ゆきお)さんの作品に出会い、その後も約10年にわたって作品を注文し続けたと伝えられています。

この記事では、ジョブズとのエピソードから、越中瀬戸焼の特徴と歴史、7人の作家と窯元、陶芸体験ができる「陶農館」、器を買える場所(通販を含む)まで、まとめて紹介します。

📋 越中瀬戸焼をひとことで

  • 読み方:えっちゅうせとやき
  • 産地:富山県立山町の瀬戸地区(新瀬戸・上末・上瀬戸など)
  • 歴史:約430年。加賀藩が尾張(愛知県)の瀬戸から陶工を招いたのが始まり
  • 特徴:立山で掘った土(特に白土)と、藁や木の灰から作る釉薬
  • ジョブズ:1996年、庄楽窯の釋永由紀夫さんの作品に出会う
  • 体験・購入:越中陶の里「陶農館」(立山町瀬戸新)
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スティーブ・ジョブズが愛した越中瀬戸焼

ジョブズと越中瀬戸焼の出会いは1996年です。京都で開かれた釋永由紀夫さんの個展に、ジョブズが夫人とプライベートで訪れました。

元NHK記者の佐伯健太郎さんの著書『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』(晶文社)によると、ジョブズは3日続けて個展に通い、初日は開店前から並んでいたそうです。作品を手にしたジョブズは「この土はどこで採れるのか」「どうやってその土を見つけるのか」と、土について熱心に尋ねたといいます。

このとき買った作品には茶碗も含まれていました。作品を買った日、ジョブズは初めて自己紹介をして、映画『トイ・ストーリー』の本を釋永さんに贈りました。映画を知らなかった釋永さんが本を脇に置くと、ジョブズは少し機嫌を損ね、自分でページを開いて見せたそうです。芳名帳には小さな字で「Steve & Laurene Jobs」と書かれていました。

その後もジョブズは、電話やファックスで釋永さんに作品の制作を頼み続けました。交流は約10年続いたと伝えられています。

💡 ジョブズが惹かれた「立山の白土」
釋永さんが使うのは、立山町の里山で自ら掘り出した白い粘土(白土)です。鉄分が少なく粒子が細かいため、高い温度で焼くと、陶器でありながら磁器に近い、きめ細かな質感になります。

出典:文春オンライン(2026年6月6日、佐伯健太郎『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』より)、Mac Fan(2026年5月28日)、nippon.com「スティーブ・ジョブズと日本」、柿傳ギャラリー「釋永由紀夫 新作展」

釋永由紀夫さん(庄楽窯)と、娘の釋永陽さんの仕事を紹介する動画(ニッポン手仕事図鑑、2022年)

越中瀬戸焼の特徴|立山の土と自然の釉薬

越中瀬戸焼の作り方 土を掘る・灰の釉薬・薪窯で焼く
土作りから焼き上げまで、ほぼすべてを立山の地で
白い土に灰の釉薬が流れる越中瀬戸焼のイメージ
白い土に灰の釉薬が流れる器のイメージ(※イメージ画像)

① 立山で掘った土を使う

越中瀬戸焼の作家たちは、立山のふもとで自ら粘土を掘り、石や木の根を取り除いて土を作ります。茶褐色、黄色、青、赤茶などさまざまな色の土があり、中でも特別なのが白土です。白土は鉄分が少なく、粒子が細かく、高い温度に強いのが特徴で、薄くて軽い器になります。越中瀬戸焼が始まったころは、加賀藩・前田家の御用窯がこの白土を独占して使っていたと、釋永由紀夫さんは紹介しています。

② 藁や木の灰から作る釉薬

器の表面をおおう釉薬(ゆうやく)も、地元の材料から作ります。近くの農家の稲藁の灰(藁灰)や、窯を焚いたあとに残る松の灰などを調合した、自然由来の釉薬です。

③ 薪の窯で焼く

電気やガスの窯に加えて、登り窯や穴窯などの薪窯を使い続けている作家もいます。窯の中で灰が降りかかり、器に思いがけない色や流れ(景色)が生まれます。土作りから焼き上げまでを、ほぼすべて立山の地で完結できるのが、越中瀬戸焼の大きな魅力です。

越中瀬戸焼の歴史|430年続く富山の焼き物

越中瀬戸焼の産地である立山町の上末(かんずえ)周辺は、平安時代の初めから須恵器(すえき)が焼かれていた、古い窯の地です。

今から約430年前、良質な土に目をつけた加賀藩・前田家が、尾張の瀬戸(愛知県瀬戸市)から陶工を招いて窯を開かせたのが、越中瀬戸焼の始まりとされています。招いたのは前田利長とも前田利家とも紹介されています。江戸時代には加賀藩の御用窯として茶道具が作られ、すり鉢などの日用品まで幅広く焼かれました。

越中瀬戸焼の歴史年表 平安時代の須恵器から2013年の富山県指定伝統工芸品まで
越中瀬戸焼の歩み
時代 主なできごと
平安時代初め 上末周辺で須恵器が焼かれる
約430年前 加賀藩が尾張の瀬戸から陶工を招き、越中瀬戸焼が始まる
江戸時代 加賀藩の御用窯として茶道具から日用品まで作られる
明治〜大正 衰退し、一時は途絶える
昭和初期 地元の人々の熱意で復興。釋永由紀夫さんの祖父・釋永庄次郎さんも力を尽くす
1996年 京都の個展でジョブズが釋永由紀夫さんの作品に出会う
2011年 窯元の作家5人で「かなくれ会」を結成
2013年 富山県指定伝統工芸品の第1号に選ばれる

出典:越中瀬戸焼 かなくれ会、伝統的工芸品産業振興協会「越中瀬戸焼」、とやま観光ナビ「越中瀬戸焼の魅力を知る」

越中瀬戸焼の窯元・作家|かなくれ会の7人

2011年、越中瀬戸焼の作家たちは「郷土に根ざした陶芸のあり方を考えよう」と「かなくれ会」を結成しました。「かなくれ」は、この土地の言葉で陶片(焼き物のかけら)のこと。周りに捨てられた古い陶片も、先人の知恵として作陶の参考にしています。現在は7人の作家が所属しています。

作家(窯) 特徴
釋永由紀夫
(庄楽窯)
1954年生まれ。1975年に庄楽窯を継ぐ。立山の白土にこだわり、高麗茶碗に影響を受けた茶碗も。ジョブズが愛した作家。富山県「伝統工芸の匠」
釋永陽
(釋永陽陶芸工房)
陶芸家の父を見て育つ。土作りを大切にした、日々の暮らしに寄り添う器
加藤聡明
(四郎八窯)
九谷焼で7年修業。松の薪で焚く登り窯の、灰と「緋色」が生む景色。富山県「伝統工芸の匠」
吉野香岳
(千寿窯)
1970年生まれ、三代目。立山の四季を映す釉薬(春は緑の灰釉、秋は黄瀬戸など)。日常の器から茶陶まで。工房見学・オーダーも相談可
北村風巳
(枯芒ノ窯)
土・灰・薪まで富山の材料にこだわり、原料の採取から窯出しまで一人で手がける
山田智子 陶農館の研修生を経て、2020年に立山町に工房を開く。景色をモチーフにした器
千田里実 10年の研修を経て2023年に会員に。思わず笑顔になる動物や植物のモチーフ

出典:越中瀬戸焼 かなくれ会「作家紹介」(2026年10月18日確認)

作家たちの新作や展示会の情報は、かなくれ会のInstagramやFacebookで発信されています。YouTubeの「とやまの明日へ」では、作家一人ひとりの仕事を紹介する動画も見られます。

窯元はいずれも立山町の上末・上瀬戸周辺にあります。窯元へ直通する公共交通機関はなく、見学には事前の問い合わせが必要です。まずは作家全員の作品が並ぶ陶農館を訪ねるのがおすすめです。

陶農館で越中瀬戸焼の陶芸体験

立山町瀬戸新にある越中陶の里「陶農館(とうのうかん)」は、越中瀬戸焼を見て、作って、買える施設です。里山の緑に囲まれ、作家たちの工房もすぐ近くにあります。

陶農館の陶芸体験 手びねりコースと絵付けコースの料金と所要時間
陶農館の2つの体験コース(2026年10月18日確認)

陶芸体験では、スタッフが山から掘って精製した越中瀬戸の土を使えます。越中瀬戸の土で陶芸体験ができるのは、ここだけとされています。

料金・値段 内容(2026年10月18日確認)
手びねりコース 越中瀬戸土 1,430円/教材粘土 1,540円(約2時間)
絵付けコース 湯呑 1,540円/マグカップ・皿 1,980円(約1時間〜)
陶農館オリジナル片口 5,300円(原型監修:釋永由紀夫さん、通販「ぜんぶ、立山。」)
かなくれ会の器のセット 1人揃え(湯呑・飯茶碗・銘々皿・片口・お猪口)14,000円(売り切れ)

※体験料金はとやま観光ナビ「越中陶の里 陶農館」、器の値段はぜんぶ、立山。で確認。20名以上の団体は体験が各コース100円引き。料金は変わることがあるので、予約のときに確認してください。

項目 内容
予約 体験は前日までに電話かホームページで(20名以上は1か月前まで)。見学だけなら予約不要・無料
仕上がり 約1か月後
持ち物 汚れてもいい服装、エプロン
営業時間 9:00〜16:00
定休日 火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
住所 富山県中新川郡立山町瀬戸新31
行き方 車:富山駅から約40〜45分、立山ICから約15〜20分
バス:富山地方鉄道・五百石駅から町営バス吉峰線「陶農館前」(1日数本)
タクシー:五百石駅から約15〜20分
駐車場 35台(大型3台)無料
電話 076-462-3929

出典:とやま観光ナビ、グリーンパーク吉峰「越中陶の里 陶農館」(オンライン予約・利用案内あり)、陶農館のInstagram

作品は約1か月後の仕上がりなので、遠方から参加する人は、受け取り方法(発送できるか、送料はいくらか)を予約のときに確認しておきましょう。

営業日や臨時の展示休止は、陶農館のInstagramでお知らせされています。出かける前に確認すると安心です。公共交通機関は本数が少ないので、車で行くのが便利です。マグカップの絵付けコースなら約1時間からなので、子ども連れでも気軽に参加できます。

越中瀬戸焼を買える場所(通販あり)

① 陶農館(作家7人の作品がそろう)

いちばん確実なのは陶農館です。エントランスで、かなくれ会の作家7人全員の作品を展示・販売しています。湯呑や飯茶碗などの普段使いの器から茶道具まで、作家ごとの違いを見比べながら選べます。

② 通販「ぜんぶ、立山。」

立山町の産品を扱う通販サイト「ぜんぶ、立山。」では、陶農館が販売元となって越中瀬戸焼を扱っています。2026年10月18日時点では、釋永由紀夫さんが原型を監修した陶農館オリジナルの片口(5,300円)が購入できます。釋永さん本人の作品ではなく、陶農館のスタッフが越中瀬戸の土で作ったものです。作家7人の器を詰め合わせたセット(1人揃え・湯呑・銘々皿)は売り切れでした。

③ 楽天市場

楽天市場では、千寿窯・吉野香岳さんの茶碗などが販売されています。庄楽窯の茶碗などは中古品として出ていることもあります。作家名・窯名と、木箱(共箱)の有無を商品説明でよく確認してください。

🔍 楽天市場で「越中瀬戸焼」を検索する
※中古品・骨董品もまざっています。状態と価格をよく確認してください。

マグカップを探すなら

越中瀬戸焼のマグカップは、通販ではほとんど見つかりませんでした(2026年10月18日時点)。陶農館の売り場で作家ものを探すか、絵付けコースで自分だけのマグカップを作るのがおすすめです。手びねりコースで越中瀬戸の土からカップを作れば、ジョブズが惹かれた立山の土を自分の手で感じられます。

ほかの焼き物との違い

焼き物 特徴 産地
越中瀬戸焼 立山の白土・灰の釉薬・薪窯 富山県立山町
瀬戸焼 越中瀬戸焼のルーツ。陶器も磁器も作る大産地 愛知県瀬戸市
越前焼 釉薬を使わない焼き締め。日本六古窯のひとつ 福井県越前町

同じ北陸の焼き物では、福井の越前焼が「釉薬を使わない焼き締め」なのに対し、越中瀬戸焼は灰の釉薬をかけた器が多いのが違いです。越前焼について詳しくは越前焼の特徴3つ|備前焼との違い・六古窯の比較表で紹介しています。

よくある質問(FAQ)

越中瀬戸焼とはどんな焼き物ですか?

富山県立山町の瀬戸地区(新瀬戸・上末・上瀬戸など)で430年ほど前から作られている焼き物です。加賀藩が尾張の瀬戸から陶工を招いたのが始まりとされ、地元で掘った土と、藁や木の灰から作る釉薬を使うのが特徴です。2013年に富山県指定伝統工芸品の第1号になりました。

スティーブ・ジョブズと越中瀬戸焼の関係は?

1996年、京都で開かれた越中瀬戸焼の陶芸家・釋永由紀夫さん(庄楽窯)の個展をジョブズが訪れ、作品を買いました。その後も電話やファックスで作品の制作を頼み、交流は約10年続いたと伝えられています。

越中瀬戸焼の特徴は?

立山のふもとで掘った土を使うことです。中でも白土は鉄分が少なく粒子が細かいため、高い温度で焼くと磁器に近い、薄く軽い器になります。釉薬は地元の稲藁や木の灰などから作り、登り窯などの薪窯で焼く作家もいます。

越中瀬戸焼の窯元はいくつありますか?

作家グループ「かなくれ会」には、釋永由紀夫さん(庄楽窯)、釋永陽さん(釋永陽陶芸工房)、加藤聡明さん(四郎八窯)、吉野香岳さん(千寿窯)、北村風巳さん(枯芒ノ窯)、山田智子さん、千田里実さんの7人が所属しています。窯元の見学には事前の問い合わせが必要です。

越中瀬戸焼の陶芸体験はどこでできますか?

立山町の越中陶の里「陶農館」でできます。越中瀬戸の土を使える手びねりコースと、湯呑やマグカップに絵を描く絵付けコースがあります。体験は前日までに電話かホームページで予約します。作品の仕上がりは約1か月後です。

越中瀬戸焼はどこで買えますか?

陶農館で、かなくれ会の作家7人全員の作品が展示・販売されています。通販では、立山町の産品を扱う「ぜんぶ、立山。」で陶農館オリジナルの器などが買えます。楽天市場では吉野香岳さんの茶碗などが出ていますが、中古品も多くあります。

越中瀬戸焼のマグカップはありますか?

普段使いの器を作る作家もいますが、通販ではマグカップはほとんど見つかりませんでした。陶農館の売り場で探すか、陶農館の絵付けコース(マグカップ)で自分で作るのがおすすめです。

陶農館への行き方は?

車なら富山駅から約40〜45分、北陸道の立山ICから約15〜20分です。無料駐車場が35台あります。公共交通機関は、富山地方鉄道の五百石駅から町営バス(吉峰線)が1日に数本あり、「陶農館前」で降ります。タクシーなら五百石駅から約15〜20分です。

まとめ

越中瀬戸焼は、加賀藩が尾張の瀬戸から陶工を招いて始まった、富山県立山町で430年続く焼き物です。立山で掘った土、特に鉄分の少ない白土と、藁や木の灰から作る釉薬が特徴で、スティーブ・ジョブズも庄楽窯・釋永由紀夫さんの器に惹かれ、約10年にわたって作品を注文しました。

実物を見て選ぶなら、作家7人の作品がそろう陶農館へ。越中瀬戸の土を使った陶芸体験もできます。遠方からは、通販「ぜんぶ、立山。」や楽天市場をのぞいてみてください。

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