能登半島の七尾湾に浮かぶ能登島には、日本のガラス工芸の歴史を変えた工房があります。
1984年創業の能登島ガラス工房は、日本に吹きガラス体験文化を根付かせた先駆け的存在。40年以上にわたり、能登島の自然の中で「世界にひとつだけのガラス」を作り続けてきました。
2024年1月1日、令和6年能登半島地震(最大震度7)が能登を直撃しました。能登島ガラス工房も被害を受けましたが、スタッフたちは懸命に復旧に取り組み、同年3月には体験営業を再開。訪れるお客様の笑顔がそのまま工房の、そして能登の復興の力になっています。
この記事では、能登島ガラス工房の体験内容と料金、震災後の復興の歩み、そして「体験に行くこと」がなぜ能登の復興支援につながるのかを、初心者向けに丁寧に解説します。
能登島ガラス工房とは:40年の歴史と「能登島だからこそ」の理由
廃校を再生した工房が、日本のガラス体験文化を作った
能登島ガラス工房は1984年7月、当時日本唯一のガラス専門学校であった「東京ガラス工芸研究所」の分校として設立されました。
能登島では1982年4月に能登島大橋が開通したことから離島振興法の適用対象から除外され、新たな核が必要な状況にありました。一方1983年4月には島内の小学校4校が能登島小学校に統合され、統合元の空校舎の活用も課題となっていました。廃校となった校舎を活用し、ガラス工芸を通じて島を再生する——この発想が、現在の能登島ガラス工房の原点です。
能登島ガラス工房は、廃校利用・観光誘致・雇用促進・新しいガラス工芸開発などを目的としてオープンしました。
ヴェネツィアン・グラスが作られているのがムラノ島という島であることも立地の決め手となったといいます。ガラス工芸と島——そこには必然的なつながりがありました。
能登島のガラス工芸が生む作品の幅
吹きガラスをはじめ、キルンワーク・カット・バーナーワークなどさまざまなガラス工芸技法を用い、テーブルウェア・ガラスアクセサリー・茶道具から、オブジェ・建築用材・モニュメントなど、幅広く制作・販売しています。
毎年夏には「のと風鈴」と呼ばれる風鈴を年間1000個近く作っています。七尾湾の潮風に揺れる手作りの風鈴は、能登島の夏を象徴する風物詩です。
能登半島地震と能登島ガラス工房:被災から復活へ
2024年1月1日:地震が能登を襲った
2024年1月に震度7の大地震が発生しました。死者数260名、建物の全壊・半壊の被害は3万棟にのぼり、道路をはじめとするインフラにも甚大な被害がありました。
能登島も例外ではありませんでした。能登島は七尾湾内にある島で、南側は和倉温泉、西側は中島町とそれぞれ橋でつながっています。このうち中島町と接続するツインブリッジのとは閉鎖となりました。
隣接する石川県能登島ガラス美術館も大きな被害を受けました。七尾市の県能登島ガラス美術館では、屋外に展示する14点のうち、1991年の開館時から設置されている楠田信吾さんのガラス彫刻作品「COSMIC FLY」が大破し、藤田喬平さんの「蔵」もバラバラに。館内でも約100点のうち2〜3割が倒れたり、欠けたりしました。
学芸員は「作品と一緒に崩れ落ちるような気持ちだった」と破損にショックを受けつつ「奥能登がまだまだ大変な状況で人命が優先。復旧はもう少し後になる」と話しました。
励ましの手紙が工房を動かした
震災直後、能登島ガラス工房には全国から多くの支援の声が届きました。震災直後には、かつて工房を訪れた遠方のお客様から多くの励ましの手紙を受け取り、再起への力を得たそう。
全国のガラス作家たちも立ち上がりました。このチャリティーは、全国で活動するガラス作家たちが自身の作品を能登島ガラス工房に寄付し、売上金の全額が能登島ガラス工房の復興支援金となりました。
2024年3月:体験営業を再開
能登震災によって被害を受けたにもかかわらず、2024年3月には営業を再開。今も、オンラインショップを通じて商品の購入で応援してくださる方々がおり、日々、感謝の気持ちでいっぱいだと言います。
工房のブログには2025年1月の言葉が残っています。「昨年を振り返ると、元日能登半島地震から始まり、本当に目の前の課題にひたむきに取り組んだ1年でした」——その言葉が、どれほどの困難を乗り越えてきたかを物語っています。
2025年春には能登島に新しいスタッフが加わり、工房に新しい空気が流れ始めました。隣接するのとじま水族館も完全復活を果たし、能登島全体に少しずつ賑わいが戻っています。
訪れることが、最大の復興支援になる
能登の復興に必要なのは、「人が来ること」です。観光客が工房を訪れ、体験し、作品を購入する——その一つひとつが、工房スタッフの雇用を守り、能登島の経済を動かします。
「来ること」を躊躇わないでください。能登島ガラス工房は今日も、訪れるあなたを待っています。
能登島ガラス工房の体験メニュー
① 吹きガラス体験【イチオシ・所要約15分】
1300℃で溶けた柔らかいガラスを吹き竿の先に巻きつけ、風船を膨らませる要領でコップや風鈴などが作れます。熱く水飴状に溶けたガラスを濡れた新聞紙で触ったりしながら、ガラスが柔らかいうちに形作っていく吹きガラスはライブ感たっぷりです。当工房イチオシの体験です。
6歳以上の方が対象で、マンツーマンですので安心して体験できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 難易度 | ★★☆(スタッフが補助・初心者OK) |
| 所要時間 | 約15分 |
| 対象年齢 | 6歳以上 |
| 料金 | 3,850円〜(税込) |
| 持ち帰り | 翌日午後以降(または後日発送) |
| 受付時間 | 9:00〜16:30(12:00〜13:00・15:00〜15:30は休憩) |
※作品は翌日午後以降に受け取り、または発送(770円〜)での対応となります。旅程に余裕を持って参加しましょう。
② サンドブラスト体験【じっくり派向け・所要約60分】
サンドブラストとは砂をガラスの表面に吹き付けて、彫刻的・絵画的な表面加工を施す技法です。体験ではシールが貼ってあるガラスコップなどに絵を描いてカッターで切り抜いていきます。じっくりと腰を据えてできる体験です。
絵を描くのが好きな方・自分でデザインをこだわって作りたい方に向いています。吹きガラスとは異なり、作品をその場で持ち帰れるのも魅力です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 難易度 | ★☆☆(初心者向け) |
| 所要時間 | 約60分(団体は約80分) |
| 対象年齢 | 小さなお子様は付き添いの大人と一緒に |
| 料金 | コップ 1,320円 / マグカップ・皿 1,650円 / ジョッキ 1,980円(すべて税込) |
| 持ち帰り | 当日OK |
| 受付時間 | 9:00〜16:00 |
③ アクセサリー体験【手軽・持ち帰り当日OK】
ガラスを使ったアクセサリー作り体験も用意されています。吹きガラスより手軽に参加でき、完成品をその日のうちに持ち帰れます。旅行のお土産や記念品として人気のプログラムです。詳細は予約時に確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 難易度 | ★☆☆(初心者向け) |
| 持ち帰り | 当日OK |
| 受付時間 | 要問い合わせ |
体験施設の基本情報
| 施設名 | 能登島ガラス工房 |
| 住所 | 石川県七尾市能登島向田町122-53 |
| 電話 | 0767-84-1180 |
| 営業時間 | 9:00〜17:00 |
| 定休日 | 基本年中無休(メンテナンス期間は吹きガラス体験休止あり) |
| 予約 | 推奨(Web予約フォームまたは電話) |
| 駐車場 | あり(道の駅のとじまに隣接) |
| 公式サイト | 能登島ガラス工房 |
| オンラインショップ | 能登島ガラス工房 BASE店 |
アクセス:能登島への行き方
能登島へのアクセスは、震災後の復旧状況に合わせてご確認ください(2025年現在)。
電車+バス JR七尾線「和倉温泉駅」から能登島交通バスで約30分→「能登島ガラス工房」停留所下車すぐ。のとじま水族館から能登島交通バスで約5分という立地です。
車 のと里山海道「田鶴浜IC」から能登島大橋経由で約20分。道の駅のとじまに隣接しているため駐車場は広く使いやすいです。
注意点 中島町と接続するツインブリッジのとは閉鎖中で、和倉温泉からの能登島大橋でのみ渡ることができます。最新の道路状況は、訪問前に石川県または七尾市の公式情報を確認してください。
体験の流れと当日のコツ
吹きガラス体験の流れ
STEP 1:受付・作品のかたちと色を選ぶ グラス・風鈴・一輪挿しなどのかたちと、混ぜる色ガラスを選びます。迷ったらスタッフに相談しましょう。
STEP 2:インストラクターが溶けたガラスを竿につける 約1300℃の炉から、水飴状に溶けたガラスを吹き竿の先端に巻き取ります。ここはスタッフが担当します。
STEP 3:濡れた布でガラスを冷ます インストラクターさんの指導のもと、濡れた布で、ある程度の温度になるまでガラスを冷まします。
STEP 4:息を吹き込んでガラスを膨らませる インストラクターさんの合図でガラスにやさしく息を吹き込みます。すると、ガラスがみるみるうちに大きくなります。その後、再び溶かしたガラスを竿につけ、冷まして、吹くという作業を何度か繰り返すと、いよいよかたちができてきます。
STEP 5:仕上げ・徐冷炉へ かたちが整ったら職人が仕上げを行い、徐冷炉へ入れます。急激な温度変化による割れを防ぐため、ゆっくりと冷ます時間が必要です。
STEP 6:翌日以降に受け取り 作品は翌日午後以降に工房で受け取るか、後日発送(770円〜)で自宅へ届けてもらえます。
初心者のためのコツ
① 服装は肌の露出を少なく 出来るだけ露出の少ない服装でお越しください。高温のガラスを扱う体験のため、半袖・サンダルは避けましょう。
② 息はやさしく、ゆっくりと 一気に強く吹くとガラスが歪んだり割れることがあります。風船を膨らませるイメージで、やさしく均一に息を吹き込むのがコツです。
③ インストラクターの合図を待つ タイミングがとても大切です。合図なしに息を吹いたり、竿を動かすと形が崩れます。必ずインストラクターの指示に従って動きましょう。
④ 作品の受け取り日程を旅程に組み込む 吹きガラスの作品は翌日以降の受け取りになります。能登島や七尾市に宿泊するプランで、翌朝受け取って帰る——という旅程が最もスムーズです。
⑤ メンテナンス期間を事前確認 吹きガラス体験は炉のメンテナンス期間中(年に数回・約1週間)は休止となります。公式サイトのお知らせを必ず確認してから予約してください。
能登島で「体験観光」が復興支援になる理由
観光は能登の復興に直結しています。工房を訪れ、体験し、ショップで作品を購入する——その消費が工房スタッフの給料になり、宿泊・飲食・交通の利用が地域全体の経済を動かします。
「まだ復旧していないから行くのは申し訳ない」という声もありますが、今こそ行くことが支援になります。能登島ガラス工房は訪問客を歓迎しており、体験プログラムもフル稼働で受け入れています。
また、訪れることができない方でも、オンラインショップでガラス作品を購入することが直接の支援になります。
体験観光で能登を応援する方法
- 能登島ガラス工房で吹きガラス・サンドブラスト体験に参加する
- ショップでガラス作品・お土産を購入する
- オンラインショップ(BASE・楽天)でガラス製品を購入する
- 七尾市・和倉温泉のホテル・旅館に宿泊する
- SNSで能登島の魅力を発信して「行きたい」人を増やす
よくある質問(FAQ)
Q. 震災後、能登島ガラス工房は営業していますか? A. はい、2024年3月より体験営業を再開しています。2025年現在、吹きガラス・サンドブラスト・アクセサリー体験すべて実施中です。メンテナンス期間は吹きガラスが休止になる場合があります。最新情報は公式サイトのお知らせをご確認ください。
Q. 隣接する能登島ガラス美術館は見学できますか? A. 能登島ガラス美術館は能登半島地震の被害を受け、2025年現在も臨時休館中です。美術館の収蔵作品は神戸など他都市での巡回展で鑑賞できる機会もあります。最新状況は七尾市または公益財団法人七尾美術財団の公式サイトでご確認ください。
Q. 予約は必要ですか? A. 基本的にはご予約優先となりますが、工房の状況によりご予約のないお客様も体験できますので、お立ち寄りの際には最寄のスタッフまでお気軽に声をお掛けください。繁忙期は事前予約がおすすめです。
Q. 子どもでも参加できますか? A. 吹きガラス体験は6歳以上が対象です。サンドブラスト体験は小さなお子様も付き添いの大人と一緒に参加できます。
Q. 作品をその日に持ち帰れますか? A. サンドブラスト体験・アクセサリー体験は当日持ち帰り可能です。吹きガラス体験は翌日午後以降の受け取り、または発送(770円〜)となります。
Q. 能登島へのアクセスは安全ですか? A. 能登島大橋は通行可能で、公共交通(バス)も運行しています。2024年に閉鎖されていたツインブリッジのとについては、最新の復旧状況を石川県または七尾市の公式サイトでご確認ください。
まとめ:能登島のガラスに触れることが、復興の力になる
能登島ガラス工房が40年前に廃校を再生して生まれたように、震災という困難もまた、工房が新しい一歩を踏み出す力に変えられています。
1300℃の炎の前で、職人と同じ道具を使って息を吹き込む体験——それはガラスを作る体験であると同時に、能登という土地の記憶と力に触れる体験です。
七尾湾を望む能登島で、ぜひ世界にひとつだけのガラスを作ってみてください。あなたの訪問が、能登の明日をつくります。
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※料金・体験内容・営業時間・道路状況は変更になる場合があります。訪問前に必ず公式サイトおよび石川県・七尾市の最新情報をご確認ください。



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