珠洲焼とは?歴史・体験・購入方法と能登復興を応援する方法【石川県・珠洲市】

珠洲焼とは?歴史・特徴・購入方法と珠洲市での体験情報

能登半島の先端、石川県珠洲市に生まれた**珠洲焼(すずやき)**は、深い灰黒色の肌と静謐な佇まいを持つ、日本でも類を見ない焼き物です。

平安時代末期から室町時代にかけて栄え、14世紀には日本列島の四分の一を流通圏とするほど隆盛を誇りながら、15世紀後半に忽然と姿を消した「幻の古陶」——その理由は今も謎に包まれています。約500年の眠りから覚め、1976年(昭和51年)に珠洲の地で復興を遂げた珠洲焼は、2024年1月1日の能登半島地震によって再び大きな打撃を受けました。

それでも窯元・作家たちは諦めませんでした。窯を再建し、土を掘り、炎に向き合い続けています。

本記事では、珠洲焼の歴史・特徴・魅力をものづくりの視点から解説し、購入方法と能登復興を応援する方法をまとめて紹介します。


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珠洲焼とは:「幻の古陶」が復興するまで

平安時代末期に始まった1200年の歴史

珠洲焼は、12世紀中葉(平安時代末)から15世紀末(室町時代後期)にかけて、珠洲郡内で生産された。北海道南部から福井県にかけての日本海側に広く流通した、中世日本を代表する焼き物のひとつです。

14世紀には、珠洲郡は日本列島の四分の一を流通圏とする、日本有数の焼き物生産地に成長したとされています。しかしその後、珠洲焼は15世紀後半には急速に衰え、まもなく廃絶します。その理由はわからず、繁栄と突然の消失は「幻の古陶」として今も多くの謎に包まれています。

約500年の眠りから目覚めた:1976年の復興

約400年前に忽然と姿を消した珠洲焼を1976年(昭和51年)珠洲市が復興。1989年、石川県指定伝統的工芸品の指定を受けます。

「珠洲焼(すずやき)」という言葉ができたのは、わずか60年ほど前のこと。500年ほど途絶えていたため、その存在すら忘れられていました。大陸から渡ってきたやきものの技の流れを残しながら、独自の深化を遂げた珠洲焼。

復興を後押ししたのは、珠洲の土地と歴史を愛する人々の情熱でした。珠洲焼に魅了された研究者・陶工たちが窯を築き、技法を研究し、再び珠洲の炎を灯しました。現在、市内18か所に窯元があります(令和6年能登半島地震以前)。

なぜ能登半島の先端で生まれたのか

能登半島は日本海航路の重要な中継点であり、重く破損しやすい焼き物を流通するために有利なことが、この地域で珠洲焼の生産が始められた大きな理由の一つと考えられています。

日本海に突き出した能登半島の地の利が、珠洲焼を全国へ広める流通の基盤となっていたのです。


珠洲焼の特徴:「黒」の美しさはどこから生まれるのか

釉薬を使わない「焼き締め」の技法

珠洲焼の最大の特徴は、釉薬を一切使わない焼き締めです。

そのつくり方は、古墳時代から平安時代にかけて焼かれた須恵器を受け継ぎ、窖窯(あながま)を使い燃料の量に対して供給する酸素の少ない還元炎焼成で、1200度以上の高温で焼き締めていくものです。火を止めた後も窯を密閉し窯内を酸欠状態にすることで、粘土に含まれる鉄分が黒く発色し、焼きあがった製品は青灰から灰黒色となります。

釉薬はかけていませんが、焼成中に降りかかった灰が熔けて灰白色の自然釉となり、独特の景色を生むのです。松の薪が燃えて灰となり、器の上に降りかかり、そのまま溶けて自然の釉薬となる——人の手と自然の炎が共同制作した景色こそが、珠洲焼の一点ものの表情を生み出します。

窖窯(あながま)という、丘陵に掘られた窯

丘陵の斜面にトンネル状の窖窯を築き、燃料の量に対して供給する空気を制限する還元炎焼成を行ない、1200度以上の高温で焼き締める。この窖窯という構造は全国の焼き物産地でも珍しく、珠洲の丘陵地形と深く結びついた技法です。

「使うほどに育つ」器

珠洲焼の表面の凸凹は、使いこむことにより角が取れて使いやすくなります。使うほどに落ちついた色つやとなり、自分だけの愛着ある逸品となります。

輪島塗と同じく、珠洲焼もまた「使い続けることで育つ器」です。購入したその日より、10年後の方が深い味わいを持つ——そういう器を持つことの豊かさが、珠洲焼の本質にあります。

現代の珠洲焼:日用品からアートへ

昔は、甕、壺、摺鉢などの日用品が多く焼かれていましたが、近年は、ビアカップ、コーヒーカップ、大皿、小皿、鉢、箸置きなど多様なものが作られています。

現代の陶工たちは中世の技法を受け継ぎながら、日常の食卓で使える器から茶道具・花器・オブジェまで幅広く制作しています。その灰黒色の静けさは、どんな料理・花・空間にも自然になじみます。


能登半島地震と珠洲焼:3度の試練を越えて

2022年・2023年・2024年——相次ぐ地震

珠洲市は2022年・2023年にも震度6弱・6強の地震に見舞われ、窯元は繰り返し被害を受けてきました。そして2024年1月1日、震度7の能登半島地震が決定的な打撃を与えます。

2024年1月の能登半島地震により、石川県珠洲市の珠洲焼窯元22基がすべて損壊し、多くの作家が工房や住まい、道具や作品の多くを失いました。再建した窯が再び倒壊する例もあり、廃業するケースも出始めています。

諦めなかった作家たち

窯元を筆頭に多くの陶工が今だ復旧道半ばですが、能登の土と炎が育んできた珠洲焼の「今」を真摯に伝えていきます。

代表的な作家・篠原敬さんは粘り強い精神力で窯を再建。2025年12月には、約2年8ヶ月ぶりに自身の窯に火を入れることに成功しました。

2024年11月、珠洲市陶芸センターの薪窯の窯焚きが再開し、2025年10月には第14回珠洲焼まつりがラポルトすずで開催されました。少しずつ、確実に、珠洲焼は再び動き始めています。


珠洲焼を購入する方法:復興を支援する3つのルート

ルート① 珠洲焼体験・公式オンラインショップ・通販サイト

珠洲焼を購入できる場所は、陶芸家・窯元の個展・展示会が中心です。もしくはウェブショップもおすすめです。

珠洲焼体験・購入先詳細場所・URL
令和7年度
珠洲市陶芸センター珠洲焼体験企画
令和7年から月に一度、珠洲焼体験が企画されています。
予約・問い合わせ:珠洲市陶芸センター
TEL 0768-82-3221

石川県珠洲市蛸島町ミ部1番地1
公式ページ:珠洲市 令和7年度珠洲焼体験企画
体験料:1500円
オンラインショップ
銀座ギャラリー門
珠洲焼作家(木澤孝則氏など)銀座ギャラリー門
珠洲焼 公式サイト
※現在購入不可・在庫切れのため情報を一時掲載停止珠洲焼 公式サイト
能登スタイルストア
※現在購入不可・在庫切れのため情報を一時掲載停止能登スタイルストア

ルート② 展示販売・イベント

珠洲焼創炎会では被災を免れた作品・復興した窯で新たに焼成した作品200点を超える珠洲焼の展示販売を実施しています。

イベント開催場所時期
珠洲焼まつりラポルトすず(珠洲市)毎年10月
創炎会 金沢展しいのき迎賓館(金沢市)不定期
SPIRAL展(東京)SPIRAL(東京・南青山)不定期
各作家の個展全国各地・銀座など作家により異なる

ルート③ 珠洲市へ足を伸ばして直接購入

珠洲まで足を伸ばせば、まず珠洲焼館へ。さらにお気に入りの陶芸家・窯元が決まり、訪問可能であれば、工房の展示室で購入可能な方もいます。

ただし珠洲焼館は現在も臨時休館中です。訪問前に必ず最新状況を確認してください。


注目の作家・窯元

現在活動中の主な窯元として、游戯窯(篠原敬)・里音窯(砂山美里子)・陶経窯(岩城伸佳)・たろう窯(多間俊太郎)・飯塚窯などがあります。

游戯窯 篠原敬(しのはら たかし)

珠洲焼を代表する作家として国内外で知られる存在。モノが圧倒的にせまってくるものではなく、すきや余裕を持たせることを心がけているという制作哲学のもと、花器は花を生けて完成だし、器は料理を盛りつけて完成します。という言葉通り、日常の中に静けさをもたらす作品を生み続けています。

3度の地震で窯を失いながらも再建を続け、2025年12月には約2年8ヶ月ぶりに窯焚きを再開。その歩みはTBSドキュメンタリー「珠洲の窯漢」としても記録され、第33回FNSドキュメンタリー大賞を受賞しました。


珠洲焼で能登復興を応援する方法

「買うこと」が最大の支援になる

珠洲市陶芸センターでは月1回の体験が再開しましたが、まだ限られた機会です。珠洲焼を購入することも、今できる直接的な復興支援のひとつです

義援金・支援金の窓口

珠洲焼創炎会では、被災した窯や陶工の再建復興支援金として義援金口座を開設しています。詳細は珠洲焼創炎会公式サイトでご確認ください。

ふるさと納税で支援

珠洲市へのふるさと納税の返礼品として珠洲焼を選ぶことができます。寄付が珠洲市の復興財源になりながら、珠洲焼の作品を手元に迎えることができます。

SNSで「珠洲焼」を発信する

購入した珠洲焼をSNSで発信することも、珠洲焼の存在を多くの人に届ける支援になります。「珠洲焼」「#珠洲焼」「#能登復興」というキーワードで投稿すると、珠洲焼を知らなかった人に届きます。


珠洲焼の陶工を目指す方へ:令和8年度研修生募集

珠洲焼の復興を担う次世代の陶工を育てるため、珠洲市陶芸センターでは令和8年度の珠洲焼基礎研修課程研修生を募集しています。

「珠洲焼の陶工として生きていきたい」という方、「能登に移住してものづくりに携わりたい」という方には、またとない機会です。

研修の概要

項目内容
研修内容1年目:珠洲焼の作陶技術を習得するための講義・実技/2年目:研究制作・商品企画・デザイン講座・市場調査
定員4名
研修期間令和8年5月〜令和10年3月
研修時間毎週火曜〜日曜 9:00〜17:00(月曜・祝日翌日・年末年始は休み)
研修場所珠洲市陶芸センター(石川県珠洲市蛸島町ミ部1番地1)
受講料月額5,500円(施設使用料・材料費・共同作業費など含む)

受講資格

  • 現に珠洲市に居住している、または市内に転居予定であること
  • 基礎研修課程修了後、将来的に珠洲市内で珠洲焼の陶工を志すこと

申込締切・選考

申込締切は令和8年3月20日(金曜日)まで随時受付。選考は令和8年4月上旬に実施予定で、面接試験(1人15分程度)と適性試験(描写・企画・構成力を問う実技試験/40分)が行われます。

奨学金制度あり

研修生が安心して研修に専念できるよう、一般社団法人珠洲焼みらい基金が基礎研修課程受講生に対して経済的支援を実施しています。受講料の負担を軽減しながら本格的に珠洲焼を学べる環境が整っています。

問い合わせ・申込先

施設名珠洲市陶芸センター
住所石川県珠洲市蛸島町ミ部1番地1
電話0768-82-3221
FAX0768-82-3252
公式ページ令和8年度珠洲焼基礎研修課程研修生募集(珠洲市)

珠洲焼の復興は、技術を受け継ぐ人材があってこそ続きます。この募集は単なる研修ではなく、珠洲焼の未来をつなぐ担い手を求める呼びかけです。


よくある質問(FAQ)

Q. 珠洲焼の陶工として学ぶ方法はありますか?
A. 珠洲市陶芸センターが令和8年度の「珠洲焼基礎研修課程」研修生を募集しています(定員4名・月額5,500円・2年間)。珠洲市への居住が条件となりますが、珠洲焼みらい基金による奨学金制度もあります。申込締切は令和8年3月20日。詳細は珠洲市公式サイトをご確認ください。

Q. 珠洲焼はいくらくらいから購入できますか?
A. 箸置きや小皿は2,000〜5,000円程度から、ビアカップ・コーヒーカップは4,000〜8,000円程度が目安です。花器・壺などは作家・サイズにより1万円〜数万円になります。

Q. 珠洲焼の体験はできますか?
A. 珠洲焼館は現在も臨時休館中ですが、珠洲市陶芸センターでは令和7年4月より月1回の珠洲焼体験を再開しています(体験料1,500円・要予約)。最新情報は珠洲市陶芸センター(TEL 0768-82-3221)へお問い合わせください

Q. 珠洲市へはどうやって行けますか?
A. 金沢市から車で約2時間30分、のと里山海道を経由するルートが一般的です。2024年能登半島地震の影響で一部道路の復旧工事が続いている箇所があるため、訪問前に石川県・珠洲市の交通情報を確認してください。

Q. 珠洲焼と九谷焼・輪島塗の違いは何ですか?
A. 珠洲焼は釉薬を使わない焼き締めの陶器で、深い灰黒色が特徴です。九谷焼は色鮮やかな絵付けの磁器、輪島塗は漆を重ねた塗り物と、素材・技法・見た目がまったく異なります。石川県はこの3つをはじめ多様な伝統工芸が集まる日本でも稀な地域です。

Q. 珠洲焼はどんな料理に合いますか?
A. 灰黒色の落ち着いた色合いは、和食・洋食・中華を問わずどんな料理にも自然になじみます。特に白い豆腐・刺身・緑の野菜など、色のコントラストが美しく映えます。珠洲焼のビアカップでクラフトビールを飲むという楽しみ方も人気です。


まとめ:珠洲焼を手元に迎えることが、能登の未来をつなぐ

500年の眠りから目覚め、再び珠洲の炎を灯した珠洲焼は、今また困難の中にあります。しかし国内外から珠洲焼の復興を願う多くのメッセージが届いており、珠洲焼創炎会は皆さまから寄せられた励ましを力に前へ進んでいます。

一点一点、作家が土と向き合い、窯と対話して生まれた珠洲焼。その器を手元に置くことは、能登という土地の記憶と、それを守り続ける人々の意志を、日常の暮らしの中に迎えることです。


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※珠洲焼館・珠洲市陶芸センターの営業状況・体験再開情報は変更になる場合があります。訪問・購入前に必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。

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