「新紙幣のすかしって、どうやって作られているの?」「越前和紙は結局何がすごいの?」「ユネスコに登録されたって本当?」——そんな疑問をお持ちの方へ。
2024年に発行された新紙幣。その「すかし」の精巧な技術のルーツが、福井県越前市の越前和紙(えちぜんわし)にあることをご存じでしょうか。約1500年の歴史を持つ越前和紙は、日本の紙幣を陰で支え続けてきた”お札のふるさと”なのです。
この記事では、越前和紙の歴史・特徴から、2025年に正式決定したユネスコ無形文化遺産登録の経緯、日本三大和紙との違い、価格帯・紙漉き体験・購入方法まで詳しく解説します。
越前和紙とは|1500年の歴史と「お札のふるさと」
越前和紙は、福井県越前市(旧・今立町)の五箇地区で作られる和紙の総称です。伝説では今から約1500年前、川上御前という女神が村人に紙漉きの技を伝えたのが始まりとされ、1976年に国の伝統的工芸品に指定されています。越前奉書・越前鳥の子紙は国の重要無形文化財にも指定されている、日本を代表する和紙産地です。

BBCの記者が越前市の和紙工房を見学し、紙の神様を祀る岡太神社・大瀧神社も訪れる様子(2025年12月)
福井藩札から新紙幣のすかし技術まで
越前和紙が「お札のふるさと」と呼ばれる理由は、紙幣の歴史そのものに深く関わってきたからです。江戸時代の福井藩札(1661年)、明治維新後に日本で初めて全国流通した太政官札(1868年)にも越前和紙が使われました。
さらに明治8年(1875年)、越前和紙の職人が政府の紙幣局(現在の国立印刷局)に招かれ、偽造防止のための「黒すかし」技術の基礎を確立。この技術は令和の新紙幣(2024年発行)のすかしにも受け継がれており、国立印刷局と越前和紙産地がコラボした記念展示会も開催されました。

越前和紙とユネスコ無形文化遺産|2014年は対象外、2025年に追加登録
実は越前和紙は、和紙のユネスコ無形文化遺産登録において少し複雑な経緯をたどっています。
2014年、ユネスコ無形文化遺産に「和紙:日本の手漉和紙技術」として、石州半紙(島根)・本美濃紙(岐阜)・細川紙(埼玉)の3つが登録されました。実はこのとき、日本最大級の和紙産地である越前和紙は登録の対象に含まれていませんでした。理由は、当時の越前和紙には技術を継承する保存団体が存在しなかったためです。
これを受けて越前市では2015年に「越前生漉鳥の子紙保存会」が発足。2017年には国の重要無形文化財に指定され、再挑戦の土台が整いました。そして2025年11月、文化庁がユネスコの評価機関から「越前鳥の子紙」の追加登録勧告を発表。同年12月11日、インド・ニューデリーで開催されたユネスコ政府間委員会で正式に登録が決定し、福井県の技術・文化としては初のユネスコ無形文化遺産となりました。
越前国府大使・岸谷五朗さんによる登録記念の祝福メッセージ(越前市公式)
日本三大和紙を比較|越前和紙・美濃和紙・土佐和紙の違い
越前和紙は、美濃和紙(岐阜県)・土佐和紙(高知県)と並んで「日本三大和紙」のひとつに数えられます。
| 越前和紙(福井) | 美濃和紙(岐阜) | 土佐和紙(高知) | |
|---|---|---|---|
| 歴史 | 約1500年 | 約1300年 | 約1000年 |
| 最大の特徴 | 薄くて丈夫・水に強い | 薄くムラのない均一な紙質 | 種類が豊富 |
| 代表的な紙 | 越前奉書・越前鳥の子紙・局紙(紙幣用) | 本美濃紙(ユネスコ登録) | 土佐典具帖紙(世界最薄0.03mm) |
| 用途の幅 | 書道用紙〜紙幣まで最も幅広い | 障子紙・工芸品 | 科学分析用紙・工芸品 |
岐阜県のうちわ工芸「水うちわ」(美濃和紙製)については、以下の記事でも紹介しています。
▶ 水うちわとは|岐阜・美濃和紙の伝統工芸品|使い方・値段・通販完全ガイド【2026年】
越前和紙の種類と使われ方|価格帯早見表
| 種類 | 参考価格 | 用途 |
|---|---|---|
| 書道用紙・画仙紙 | 数百円〜 | 書道・水墨画 |
| 御朱印帳 | 1,500〜4,000円 | 寺社巡り・お土産 |
| ランプシェード | 3,000〜15,000円 | インテリア雑貨 |
| レターセット・名刺 | 1,000〜3,000円 | 贈り物・実用品 |
| ふすま紙・壁紙 | 工房へお問い合わせ | 住宅・和室リフォーム |
話題の動き|メディア注目とコラボ商品
2025年8月27日には、モデルの冨永愛さんが出演する「毎日キレイ」の企画「伝統to未来」で、全国の匠の技を紹介する特集の中に越前和紙が取り上げられました。
出典:毎日キレイ
また、地元の恐竜文具ブランド「Dinolind(ディノリンド)」など、越前和紙を使った地域コラボ商品も登場しており、伝統工芸としての枠を超えた展開が進んでいます。人気キャラクターとのコラボも盛んで、たとえばハローキティの透かし入り御朱印帳など、若い世代にも親しみやすい商品が販売されています。
越前和紙の里で紙漉き体験
福井県越前市の「越前和紙の里」エリアには、実際に紙漉きを体験できる施設があります。

| 施設 | 体験 | 料金目安 | 所要時間 | 予約 |
|---|---|---|---|---|
| パピルス館 | 紙漉き体験(色紙サイズ) | 500円〜 | 約20〜40分 | 不要 |
| 卯立の工芸館 | 伝統的な紙漉き工程の見学・体験 | 公式サイトでご確認ください | – | 要確認 |
※料金・所要時間は変更の可能性があります。最新情報は各施設の公式サイトでご確認ください。パピルス館:営業9:00〜16:00・電話0778-42-1363。
金沢・能登の伝統工芸体験もあわせてチェックしたい方はこちら。
産地に泊まる|工芸宿「SUKU」と新棟「SUKU hanare」(2026年10月1日開業)
紙漉き体験のあとは、産地に泊まる旅もできます。越前市今立の岩本町にある「工芸宿 SUKU(スク)」は、2025年11月に開業した、越前和紙を体感する宿です。客室は3室で、地元の16人の職人の和紙を使った空間と、福井の食材を使った食事、近くの工房での紙漉き体験が特徴です。運営は一般社団法人SOEです。
そして2026年10月1日、SUKUから徒歩1分の場所に、新しい宿泊棟「SUKU hanare(スク ハナレ)」が開業しました。元建具屋の古民家を改修した建物で、キッチン付きの2室があります。壁紙や照明に越前和紙を使い、「産地に暮らすような滞在」がコンセプトです。
| KETA(桁) | KAI(櫂) | |
|---|---|---|
| 定員 | 最大6名 | 2名 |
| 広さ | 約135㎡ | 約50㎡ |
| 料金 | 22,000円〜(1泊素泊まり・税込) | 18,500円〜(1泊素泊まり・税込) |
| 設備 | キッチン付き | キッチン付き(連泊・ワーケーション向け) |
※料金は、福井新聞では「1人当たり」、ほかの報道では「1泊素泊まり」と表記が分かれています。1人あたりか1室あたりかは、予約ページでご確認ください。朝食付きのプランもあります。
キッチンには、越前焼の器やマグカップ、越前漆器のお椀、越前打刃物の包丁が備わり、産地の工芸を日常の道具として使えます。空間は、若手デザイナーのチーム「閃(SEN)」が手がけました。朝食は、越前町のフレンチレストラン〈MarPe〉の谷橋洋平シェフが監修した、福井県産の食材を使ったメニューです。使われている工芸については、こちらの記事もどうぞ。
アクセス:SUKU hanareの住所は越前市岩本町15-7です。SUKU(本館)からは、越前たけふ駅から車で約10分、武生ICから車で約10分とされています。
▶ 工芸宿SUKU 公式サイト(SUKU hanareの予約案内)
※SUKU hanareが楽天トラベルに掲載されているかは確認できていません。予約は公式サイトの案内からご確認ください。
出典:erimane「SUKU hanareが2026年10月1日に開業」、福井新聞「越前和紙産地に2棟目の宿泊施設オープンへ」(2026年9月29日)、STRAIGHT PRESS、PR TIMES(工芸宿SUKU)、SUKU公式サイト(アクセス)
よくある質問
Q. 越前和紙とはどんな和紙ですか?
越前和紙は福井県越前市(旧・今立町)で約1500年にわたり作られてきた和紙です。薄くて丈夫、水に強いという特徴があり、書道用紙から紙幣・株券に使われる局紙まで、日本の和紙の中でも用途の幅が最も広い産地のひとつとされています。
Q. 越前和紙と日本の紙幣は関係がありますか?
はい、深い関係があります。明治8年(1875年)に越前和紙の職人が政府の紙幣局に招かれ、偽造防止の「黒すかし」技術の基礎を確立しました。この技術は現在も受け継がれており、2024年発行の新紙幣のすかしにも越前和紙の技術が生きています。
Q. 越前和紙はユネスコ無形文化遺産に登録されていますか?
2014年に登録された「和紙:日本の手漉和紙技術」(石州半紙・本美濃紙・細川紙が対象)には、当時継承団体がなかったため越前和紙は含まれていませんでした。その後2015年に保存会が発足し2017年に国の重要無形文化財に指定され、2025年12月に「越前鳥の子紙」としてユネスコ無形文化遺産に追加登録されました。
Q. 越前和紙・美濃和紙・土佐和紙の違いは何ですか?
越前和紙(福井)は薄くて丈夫・水に強く、局紙を含め用途の幅が最も広いのが特徴です。美濃和紙(岐阜)は薄くムラのない均一な紙質に優れ、土佐和紙(高知)は種類が豊富で、世界最薄とされる土佐典具帖紙(0.03mm)を生み出しています。
Q. 越前和紙の紙漉き体験はできますか?
はい、福井県越前市の「越前和紙の里」にあるパピルス館などで紙漉き体験ができます。色紙サイズで500円程度から、所要時間20〜40分ほどで、予約不要で気軽に参加できます。
Q. 越前和紙の産地に泊まれる宿はありますか?
あります。越前市岩本町の工芸宿「SUKU」(2025年11月開業)と、徒歩1分の新棟「SUKU hanare」(2026年10月1日開業、キッチン付き2室)です。SUKU hanareは、1泊素泊まりでKETAが22,000円〜、KAIが18,500円〜(税込)です(erimane、SUKU公式)。
Q. 越前和紙の商品はいくらくらいで、どこで買えますか?
書道用紙は数百円から、御朱印帳は1,500〜4,000円、ランプシェードは3,000〜15,000円程度が目安です。楽天市場をはじめとするオンラインショップのほか、越前和紙の里の各工房でも購入できます。
まとめ
| 産地 | 福井県越前市(旧・今立町)五箇地区 |
| 歴史 | 約1500年 |
| 特徴 | 薄くて丈夫・水に強い/局紙を含め用途の幅が最も広い |
| 紙幣とのつながり | 福井藩札〜太政官札〜2024年新紙幣のすかし技術まで |
| ユネスコ登録 | 2025年12月「越前鳥の子紙」として追加登録(福井県初) |
| 体験 | パピルス館ほか(500円〜・予約不要) |
| 宿泊 | 工芸宿SUKU・新棟SUKU hanare(2026年10月1日開業) |
越前和紙は、単なる伝統工芸品ではなく、日本の紙幣という身近な存在を陰で支え続けてきた技術でもあります。新紙幣を手に取ったとき、そのすかしの向こうにある福井の職人技を思い出してみてください。



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