「熟練職人がいなくても、AIと会話するだけで金属部品が高精度に加工できる」——そんな未来が、石川県金沢市発のスタートアップ「アルム株式会社」によって現実になろうとしています。日本の製造業が直面する深刻な職人不足に、AIで正面から挑む同社の技術は、Microsoftとの技術連携や総額7.6億円の資金調達でも注目を集めています。この記事では、アルム株式会社の技術・実績・将来性を詳しく解説します。
アルム株式会社とは|金沢発、製造業AIのフロントランナー
アルム株式会社は、石川県金沢市に本社を置く製造業向けAIスタートアップです。工作機械の加工プログラムをAIが自動で作成する技術を軸に、日本のものづくり現場が抱える「職人の高齢化」「後継者不足」という構造的な課題に取り組んでいます。
特筆すべきはその生産性です。従業員38人という少人数ながら、売上高は約80億円にのぼります。これは、AIによる自動化がいかに高い付加価値を生み出しているかを物語る数字です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本社 | 石川県金沢市 |
| 従業員数 | 38人 |
| 売上高 | 約80億円 |
| 主力製品 | ARUMCODE(NCプログラム自動生成AI) |
| 新製品 | TTMC Origin(対話型AI「KAYA」搭載加工機) |
| 累計資金調達額 | 7.6億円(2024年5月・第三者割当増資) |
ARUMCODE|NCプログラム作成を「1〜2時間→3分」に短縮するAI
工作機械で金属部品を削り出すには、事前に「どの工具で・どんな速度で・どの経路を削るか」を指示するNCプログラムという設計図が必要です。これまでは熟練の技術者が長年の経験をもとに、1つの部品ごとに1〜2時間かけて手作業で作成していました。
ARUMCODEは、3D CADデータを読み込むだけで、この工程を完全自動化するAIソフトウェアです。膨大な切削条件データベースから最適な条件をアルゴリズムで導き出し、工具選定から加工経路の計算までを自動で行います。その結果、従来1〜2時間かかっていた作業がわずか3分程度に短縮され、製造原価を50%削減できるとされています。
2023年7月には、ARUMCODEシリーズが使い放題になる月額定額制クラウドサービス「ARUM Factory365」もリリースされ、中小の町工場でも導入しやすい料金設計(スタンダードプラン月額19,800円〜)になっています。
KAYA|AIキャラクターと会話するだけで加工ができる時代へ
2026年、アルムはさらに踏み込んだ製品「TTMC Origin」を発表しました。搭載されているのが、対話型AIキャラクター「KAYA」です。
KAYAはMicrosoft Azure OpenAIの最新の大規模言語モデル(LLM)をベースに開発されており、作業者と音声で自然に会話しながら、ドリルの交換や部品の再配置といった段取り作業を1ステップずつナビゲートします。導入企業では、177ステップあった設定作業がわずか2ステップにまで削減されたという実績も報告されています。
これにより、これまで何年もの修行が必要だった精密加工が、熟練技能者でなくても高精度に行えるようになります。まさに「職人の暗黙知をAIに移植する」試みと言えるでしょう。

※AIによるイメージ画像です。実際の外観とは異なります。実機の詳細は公式サイト(TTMC Type-F5 S model)でご確認いただけます。
| 技術要素 | 役割 |
|---|---|
| Azure OpenAI | 会話の要約・判断処理 |
| Azure Speech | 音声でのやり取りの認識・応答 |
| Azure AI Search | 加工データベースの検索 |
| Microsoft Foundry | 汎用AIとしてのフォールバック機能 |
TTMC Type-F5「Blackie」|すでに実績を積む完全自動加工機
TTMC Originに先立ち、アルムには既に稼働実績のあるモデル「TTMC Type-F5」があります。愛称は「Blackie」。CEOの平山京幸氏が敬愛するギタリスト、エリック・クラプトンの愛用ギターの名前にちなんで名付けられました。
図面データを読み込ませるだけで加工が完了する完全自動化を実現しており、工具のセットはわずか1本8秒、精度判定まで自動で行われます。経験の浅い作業者でも高精度な加工品を製造できる設計です。想定価格は1億円で、すでに受注を獲得し、現在2台を製造中です。
この実績の上に、より導入しやすい価格帯(3,000万円)と、対話型AI「KAYA」による操作の分かりやすさを加えたのが、次世代モデル「TTMC Origin」というわけです。
投資家が注目する理由|7.6億円の資金調達の中身
アルムは2024年5月20日、総額7.6億円の第三者割当増資を実施しました。リード投資家のDIMENSION株式会社をはじめ、東京センチュリー・DG Daiwa Ventures・みずほキャピタル・ほくほくキャピタルなど、9社もの投資家が名を連ねています。
- DIMENSION株式会社(リード投資家)
- 株式会社ジーネット
- 東京センチュリー株式会社
- 株式会社DG Daiwa Ventures
- 新生企業投資株式会社
- 株式会社ケイエスピー
- ほくほくキャピタル株式会社
- RheosCP1号投資事業有限責任組合
- みずほキャピタル株式会社
調達した資金は、現在フライス加工のみに対応しているARUMCODE・TTMCを旋盤・研磨加工・鋳物加工へ拡張すること、そして東南アジアを中心とした海外展開に充てられる計画です。日本の「ものづくり」の課題を解決する技術が、海外の製造現場でも求められる可能性を示しています。

※AIによるイメージ画像です。
受賞歴も豊富で、CEATEC AWARD デジタル大臣賞、起業家万博 総務大臣賞、Japan Venture Awards 中小機構理事長賞など、行政・産業界から高く評価されています。
アルム株式会社は、地元・北陸朝日放送(HAB)公式チャンネルでも特集され、公開から5日で56万回再生・600件を超えるコメントを集めるなど、大きな反響を呼んでいます。
コメント欄では「AIを使いこなす企業が勝ち組になる」「職人不足の分野に挑む姿勢を応援したい」といった好意的な声が目立つ一方、「これは本当にAI活用と言えるのか」「導入企業の安定稼働の実績も知りたい」といった、技術的な視点からの意見も寄せられており、注目度の高さがうかがえます。
金沢の従業員38人の町工場がAI活用で売上80億!急成長のナゾに潜入(北陸朝日放送公式)
職人不足という日本の課題に、AIはどう向き合うのか
経済産業省の調査によれば、日本の製造業・伝統工芸の現場では、担い手の高齢化と後継者不足が深刻化しています。長年の経験と勘に頼ってきた「匠の技」は、その技術者が引退すれば失われてしまうという危機に直面してきました。
アルムが目指すのは、こうした熟練者の暗黙知をAIに学習させ、次の世代へと引き継ぐための「橋渡し」です。ベテランでなければ扱えなかった工作機械を、経験の浅い若手でも高精度に扱えるようにすることで、技術継承の課題そのものにアプローチしています。
これは、山中漆器や高岡漆器のような伝統工芸が直面する後継者問題とも、根底では同じ構造の課題です。「技術を次世代にどう残すか」という問いに、AIという新しいアプローチで挑んでいる点に、アルムの意義があります。
今後の展望
| 時期 | 予定 |
|---|---|
| 2026年7月〜 | TTMC Origin 予約販売開始(価格3,000万円・税抜) |
| 今後 | 旋盤・研磨加工・鋳物加工への対応拡大 |
| 今後 | 5軸マシニングセンターへのKAYA搭載を計画 |
| 2027年以降 | 東南アジアを中心とした段階的な海外展開 |
よくある質問
アルム株式会社とは何をしている会社ですか?
石川県金沢市に本社を置く製造業向けAIスタートアップです。NCプログラム(工作機械を動かすための加工指示データ)の作成をAIで完全自動化するソフトウェア「ARUMCODE」と、対話型AI「KAYA」を搭載した加工機「TTMC Origin」を開発しています。従業員38人ながら売上高約80億円という高い生産性を誇ります。
ARUMCODEとはどんな技術ですか?
3D CADデータを読み込むと、工具の選定・切削条件の設定・加工経路の計算までを自動で行い、NCプログラムを生成するAIソフトウェアです。従来1〜2時間かかっていた作業が3分程度に短縮され、製造原価を50%削減できるとされています。
KAYAとはどんなAIですか?
マシニングセンター「TTMC Origin」に搭載された対話型AIキャラクターです。ChatGPTの最新モデルとMicrosoft Azure OpenAIを活用し、音声で作業者に段取り手順を指示します。これにより、177ステップあった設定作業が2ステップにまで簡略化され、熟練技能者でなくても高精度な加工が可能になります。
アルム株式会社はなぜ投資家から注目されているのですか?
2024年5月に総額7.6億円の資金調達を実施し、DIMENSION株式会社をリード投資家に、東京センチュリーやみずほキャピタルなど9社が出資しました。日本の製造業が抱える深刻な職人不足という社会課題に対し、AIで具体的な解決策を示している点、Microsoftとの技術連携、数々の賞の受賞歴が評価されています。
TTMC Originはいつ、いくらで発売されますか?
2026年7月から予約販売が開始され、価格は3,000万円(税抜)です。現在はフライス加工に対応していますが、今後は旋盤・研磨加工・鋳物加工への対応拡大や、海外展開も計画されています。
まとめ|アルム株式会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 石川県金沢市 |
| 技術の核 | ARUMCODE(NC自動生成AI)・KAYA(対話型AI) |
| 実績 | 売上高約80億円/従業員38人/資金調達7.6億円 |
| 社会的意義 | 職人不足・技術継承問題へのAIによる解決策 |
アルム株式会社の技術は、単なる業務効率化にとどまらず、日本のものづくりが次の世代へ技術をつなぐための、新しい選択肢を示しています。伝統工芸が守ってきた「技を残す」という想いを、AIという現代の技術で実現しようとする挑戦から、今後も目が離せません。
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