「珠洲焼(すずやき)」は、石川県珠洲市に伝わる釉薬(うわぐすり)を使わない黒い焼き物です。
平安時代から室町時代にかけて栄え、15世紀後半に突然消えてしまった「幻の古陶(ことう)」が、1976年に約500年ぶりに復活。使うほどに艶が増す灰黒色の質感が、国内外の陶芸ファンを魅了しています。
2024年の能登半島地震では多くの窯が壊れましたが、作家たちは新しい窯をつくり、制作を続けています。
この記事では、珠洲焼の体験・購入・能登復興支援の方法をまとめて解説します。
珠洲焼とは?「幻の古陶」約850年の歴史
珠洲焼は、平安時代末期(12世紀後半)に能登半島の先端・珠洲市で生まれた焼き物です。14世紀の最盛期には北陸・東北を中心に日本列島の4分の1を商圏とする大規模な産地へと成長しましたが、15世紀後半に突如として生産が途絶えます。
その理由は現在も謎のままで、「なぜ消えたか」が珠洲焼のロマンのひとつです。約500年の眠りを経て、1976年に考古学的研究と地元作家の情熱により復興。現代では日用品からアート作品まで幅広く制作されています。
珠洲焼の特徴:「黒」の美しさはどこから生まれるのか
釉薬を使わない「焼き締め」技法
一般的な陶器は釉薬(うわぐすり)を塗って焼きますが、珠洲焼は釉薬を一切使いません。鉄分の多い珠洲の土を、1,200℃を超える高温で焼き締めます。焼成の終わりに窯の焚き口と煙道をふさいで酸素を減らす「燻べ(くすべ)焼き」(還元焼成)を行うことで、土の鉄分と木の灰が反応し、独特の灰黒色になります。灰が自然釉のような艶を生むこともあり、同じ作品は二度と作れない一点物の表情が魅力です。
出典:石川県「珠洲焼」企画展の資料、観光庁 多言語解説文データベース「珠洲焼の初期の発展」
同じく釉薬を使わない焼き締めの焼き物には、福井県の越前焼があります。越前焼が茶褐色に仕上がるのに対し、珠洲焼は燻べ焼きによる灰黒色が特徴です。
窖窯(あながま)という丘陵に掘られた窯
珠洲焼の焼成には、丘陵に掘られたトンネル状の窖窯(あながま)を使用します。薪で数日間かけてゆっくりと焼き上げることで、炎と灰が作り出す偶然の模様が生まれます。
使うほどに育つ器
珠洲焼は使い込むほどに表面に艶が増し、味わいが深まります。「育てる器」として、日常使いの茶碗・湯呑みから花器・酒器まで幅広く愛されています。
珠洲焼 体験できる場所
珠洲焼の体験は、珠洲市陶芸センターで案内されています。地震の影響で実施日が限られる場合があるため、訪問前に必ず電話で日程・空き状況を確認してください。
珠洲市陶芸センター|珠洲焼の体験施設
| 住所 | 〒927-1214 石川県珠洲市蛸島町ミ部1-1 |
|---|---|
| 電話 | 0768-82-3221 |
| 開館時間 | 8:45〜17:15 |
| 休館日 | 月曜・祝日の翌日・年末年始(12/29〜1/3) |
| 体験料金 | 一般 3,000円(粘土代・焼成代込) / 珠洲市内の児童・生徒 1,500円 |
| 所要時間 | 約2時間(開始時間は予約時に確認) |
| 人数 | 1〜12名(要予約) |
| 内容 | 手びねりで珠洲焼の器を制作。粘土1kgで小品2〜3個または大作1個。完成品は後日郵送(ふるさと納税のチケットでは、体験の2〜3か月後に届く案内) |
| 日程 | 実施日は電話で要確認 |
| 公式情報 | 珠洲焼公式サイト(体験ページ) |
| アクセス | Googleマップで見る |
⚠️ 体験日程は月によって異なります。必ず事前に電話(0768-82-3221)で日程・空き状況を確認してから訪問してください。
珠洲焼まつり|例年10月に開催(2026年は第15回)
珠洲焼まつりは、珠洲焼創炎会の陶工が集まり、珠洲焼をまとめて見比べられる年に一度の催しです。2026年は第15回が10月10日(土)・11日(日)にラポルトすず(珠洲市飯田町)で開かれ、陶工23名の作品展や、電動ろくろ体験(1,500円)が行われました。
次回の日程は、珠洲焼創炎会の公式サイトで発表されます。秋に珠洲を訪れる予定がある方は、チェックしてみてください。
出典:珠洲焼創炎会「珠洲焼まつり 2026」、主催者のチラシ
珠洲焼 通販・購入ガイド|どこで買える?
最初に正直にお伝えすると、珠洲焼は、楽天市場やAmazonなどの大手通販ではほとんど扱いがありません。珠洲焼の公式ウェブショップも、2026年10月時点では「閉店中」です。いま珠洲焼を通販で買うなら、作家の作品を扱っている小さなショップで探すのが近道です。
2026年10月11日に、実際に購入できることを確認したショップは次のとおりです。
| 購入先 | 扱っている作家・商品 | 注文・状況(2026年10月11日確認) |
|---|---|---|
| Piranika Online Shop | 木澤孝則さんの皿・カップ・茶碗・酒器など | オンラインで購入可。1点ものが多く、残りわずかの商品もあり |
| 日本工芸堂 | 木澤工作所(木澤孝則さん)のコーヒーカップ・一輪挿し・酒器 | オンラインで購入可。3,300〜4,950円(一部売り切れ) |
| 和栗白露 | 木澤孝則さんのオリジナル急須と湯呑み(27,500円) | お問い合わせフォームで注文し、銀行振込。酒器は在庫なし |
| オトメの金沢 陳列室 | 珠洲焼作家・山田睦美さんのカップ・プレート・オブジェなど | オンラインで購入可(STORES)。3,300〜6,600円前後 |
※一点ものが多く、在庫は日々変わります。価格は各ショップの表示(税込)です。
楽天・Amazonで探すときの注意
楽天市場で「珠洲焼」と検索しても、出てくるのは「珠洲の塩」や他の産地の焼き物がほとんどで、珠洲焼そのものの出品は見当たりませんでした(2026年10月11日時点)。Amazonには「珠洲焼」と書かれた湯呑みや小皿が多数ありますが、出品者は小さなショップが中心で、共箱付きのリユース品とみられるものも多くあります。作家を応援したい方は、上の表のように、作家の作品を直接扱うショップを選ぶのがおすすめです。
現地や催しで買う
- 珠洲焼館(珠洲市蛸島町):現代の陶工の作品を展示・販売する施設ですが、能登半島地震の影響で当面の間休館しています(珠洲市)。
- 珠洲焼まつり:例年10月に開かれ、陶工の作品をまとめて見比べて買えます(珠洲焼まつりの案内)。
- 個展・展示会:作家の個展や百貨店の催事で買える場合があります。窯元によっては工房の展示室で買えることもあります(珠洲焼総合サイト「買う」)。
価格の目安
| アイテム | 確認できた価格の例 |
|---|---|
| 一輪挿し・ブローチなど小物 | 3,300円〜 |
| 酒器(ぐい呑み) | 3,850円〜 |
| カップ・コーヒーカップ | 4,950〜6,600円 |
| プレート | 4,400〜7,700円 |
| 急須と湯呑みのセット | 27,500円 |
珠洲焼は一点物のため、同じ作品はありません。価格は作家・サイズ・技法によって大きく変わります。上の表は、上記のショップで2026年10月に確認できた価格の例です。
注目の作家・窯元
珠洲焼の作り手の数は、資料によって約20〜40名と幅があります(2026年の珠洲焼まつりの出展陶工は23名)。それぞれ異なる作風を持ち、同じ「黒」の中にも個性豊かな表情があります。
游戯窯 篠原敬(しのはら たかし)
2024年の能登半島地震で窯が全壊し、新しい窯で制作を再開した作家です。2025年12月には、新たな窯での窯焚きまでの歩みが、日本テレビ「news zero」で紹介されました(下の動画)。日常使いの器から大型の花器・壺まで幅広く制作しています。
その他の主な作家
木澤孝則、山田睦美、岩城伸佳、宮脇まゆみ、折坂理恵、中島大河など個性豊かな作家が活動中です。木澤孝則さんと山田睦美さんの作品は、上の通販・購入ガイドで紹介したショップで購入できます。窯元の一覧は珠洲焼公式サイト(窯元・作家紹介)、2026年の珠洲焼まつりの出展陶工は珠洲焼創炎会のページでご覧いただけます。山田睦美さんは珠洲市生まれで、珠洲焼を学んで独立した作家です(オトメの金沢の紹介)。
能登半島地震と珠洲焼:3度の試練を越えて
珠洲焼は近年、相次ぐ地震という試練に直面してきました。
- 2022年6月:珠洲市で最大震度6弱の地震。窯や工房に被害
- 2023年5月:珠洲市で最大震度6強の地震。複数の窯が損壊
- 2024年1月1日:能登半島地震(最大震度7)。珠洲焼の多くの窯が崩れる
2024年の地震では珠洲市全体が甚大な被害を受け、多くの作家が家屋・工房・窯のすべてを失いました。しかし、作家たちは「珠洲焼をやめない」という強い意志のもとで復興に取り組んでいます。
新しい窯での制作を再開する作家も出てきており、少しずつ、珠洲焼の灯が戻りつつあります。輪島塗など能登の工芸全体の状況は能登の伝統工芸品10選、復興に取り組む地元企業は能登復興を支える企業5社で紹介しています。
2025年夏、金沢の香林坊大和で開かれた「珠洲焼4人展」に寄せて、篠原敬さんは、震災からの日々を次のように綴っています。「終わりがあれば必ず新たなはじまりがある」——被災を乗り越えて生まれた作品に、珠洲焼の新たな「はじまり」を予感してほしい、というメッセージです。
出典:珠洲焼創炎会 公式Instagram(@suzu_yaki)の投稿(珠洲焼4人展を代表した、篠原敬さんのメッセージ)
出典:美術手帖(珠洲焼の展覧会紹介)、日本テレビ「news zero」(2025年12月10日放送)
珠洲焼で能登復興を応援する方法
地震で窯が被害を受けた珠洲焼作家が、復興までの道のりを歩む様子は、こちらの動画で紹介されています。
①「買うこと」が最大の支援
珠洲焼を購入することが、作家の生活と創作活動を直接支える最大の支援です。通販サイトやイベントでの購入、SNSでの発信がすべて応援になります。
②ふるさと納税で支援
楽天ふるさと納税の石川県珠洲市には、珠洲焼の陶芸体験チケット(寄付額18,000円)があります。珠洲市陶芸センターで、手回しろくろを使った手びねりを2時間(粘土1kg)体験できるもので、チケットの有効期限は発行日から1年間です。体験の予約は、利用日の3営業日前までに珠洲市役所の産業振興課(0768-82-7775)へ連絡します(2026年10月26日確認)。
③SNSで発信する
珠洲焼の魅力をSNSで発信することも、認知拡大という形での支援につながります。購入した作品の写真に「#珠洲焼」「#能登復興」をつけて投稿してみてください。
珠洲焼の作家集団「珠洲焼創炎会」は、公式Instagram(@suzu_yaki)で、展示会や珠洲焼まつりの案内、作家の近況を発信しています。フォローしておくと、個展や催事で珠洲焼を手に取れる機会を見逃さずに済みます。
出典:珠洲焼創炎会 公式Instagram(@suzu_yaki)の投稿(珠洲焼の水盤に、ムラサキシキブの実を浮かべた一枚)
よくある質問
珠洲焼まつりはいつ開催されますか?
例年10月に、珠洲焼創炎会の主催で珠洲市内で開かれています。2026年は第15回が10月10日・11日にラポルトすず(珠洲市飯田町)で開かれ、陶工23名の作品展や電動ろくろ体験が行われました。次回の日程は、珠洲焼創炎会の公式サイトで発表されます。
珠洲焼の体験は今もできますか?
珠洲市陶芸センターで体験の案内が出ています。料金は一般3,000円(粘土・焼成代込)、人数は1〜12名で、事前予約が必要です。地震の影響で実施日が限られる場合があるため、Tel:0768-82-3221 に電話で日程をご確認ください(珠洲焼公式サイト)。
珠洲焼の体験料金はいくらですか?
珠洲市陶芸センターの体験料金は一般3,000円(粘土代・焼成代込)です。珠洲市内の児童・生徒は1,500円。粘土1kgで小品2〜3個または大作1個制作できます。所要時間は約2時間で、完成品は後日郵送されます(届くまで2〜3か月かかる場合があります)。
珠洲焼は通販で買えますか?
買えますが、楽天市場やAmazonなどの大手通販ではほとんど扱いがありません。2026年10月時点で購入できるのは、次のような作家の作品を扱うショップです。珠洲焼の公式ウェブショップは閉店中です。
- Piranika Online Shop(木澤孝則さん)
- 日本工芸堂(木澤工作所)
- 和栗白露(木澤孝則さん・問い合わせ注文)
- オトメの金沢 陳列室(山田睦美さん)
価格は、小物や酒器が3,300円〜、カップが5,000〜6,600円前後が目安です。
珠洲焼はなぜ黒いのですか?
珠洲焼は釉薬を使わず、鉄分の多い珠洲の土を1,200℃を超える高温で焼き締めます。焼成の終わりに窯の焚き口と煙道をふさぎ、窯の中の酸素を減らす「燻べ(くすべ)焼き」(還元焼成)を行うことで、土の鉄分と木の灰が反応し、独特の灰黒色になります(石川県「珠洲焼」企画展の資料、観光庁 多言語解説文データベース「珠洲焼の初期の発展」)。
珠洲焼と九谷焼・輪島塗の違いは何ですか?
まとめ:珠洲焼を手元に迎えることが、能登の未来をつなぐ
- 珠洲焼は釉薬なし・焼き締めの黒い陶器で、能登半島・珠洲市だけで作られる
- 平安時代末期に始まり、500年の眠りを経て1976年に復興した「幻の古陶」
- 体験は珠洲市陶芸センターで3,000円〜(要予約・実施日は電話で確認/Tel:0768-82-3221)
- 珠洲焼まつりは例年10月に開催(2026年は第15回)
- 通販は、大手サイトではほぼ扱いがなく、作家の作品を扱う小さなショップ(Piranika・日本工芸堂・和栗白露・オトメの金沢)で探すのが近道。公式ウェブショップは閉店中
- 2024年の能登半島地震で多くの窯が被害を受けたが、作家たちは新しい窯で制作を再開している。購入・応援が力になる


コメント